「固定残業代があるから大丈夫」は危ない固定残業代の“設計ミス”が招く危険。

クリニックの残業代設計に潜む、見落とされやすいリスク
固定残業制を導入しているクリニックは多くあります。
「残業代は固定残業費に含まれている」
「毎月の給与に上乗せして払っているから問題ない」
そう思っていても、固定残業代の”中身”まで正しく設計できているクリニックは、実はそれほど多くありません。
設計が不十分なまま運用を続けると、スタッフから未払い残業代を請求されたとき、
固定残業代そのものが「無効」と判断されるリスクがあります。
固定残業代とは何か
固定残業代(みなし残業代)とは、あらかじめ一定時間分の残業代を毎月の給与に含めて支払う制度です。
残業が少ない月でも一定額を支払う代わりに、残業管理の手間を減らせるというメリットがあります。
クリニックでも、採用時の給与提示をシンプルにする目的などで導入されるケースが増えています。
ただし、この制度は要件を満たさないと法的に無効になります。
固定残業代が「無効」になる条件
固定残業代が有効と認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 固定残業代の金額が明確に区分されていること
- 何時間分の残業に相当するかが明示されていること
- 固定時間を超えた残業には追加で残業代を支払うこと
これらが就業規則や雇用契約書に明記されていない場合、
固定残業代は「残業代として機能していない」と判断される可能性があります。
その場合、固定残業代を支払っていたにもかかわらず、
改めて残業代を全額支払うよう命じられることになります。
クリニックが特に見落としやすいのが「深夜割増」
固定残業代の設計で、特にクリニックが見落としやすいのが深夜割増賃金の扱いです。
労働基準法では、22時から翌5時の間に勤務した場合、通常賃金の25%以上の割増が義務づけられています。
美容クリニックの診療時間は20〜21時終了が一般的ですが、
近年は21時・22時まで診療を行うクリニックも増えています。
また、外科系処置やオペが長引いて終業が22時をまたぐケースもゼロではありません。
こうしたケースが発生したとき、問題になるのが
「固定残業代の中に、深夜割増が含まれているかどうかが明記されていない」という状態です。
固定残業代の中に深夜割増分が含まれているなら、
それを雇用契約書や就業規則に明示しなければなりません。
含まれていないなら、深夜勤務が発生するたびに別途支払いが必要です。
この区分が曖昧なまま運用しているクリニックは少なくありません。
法定休日割増も同様の問題が起きやすい
同じ構造のリスクが、法定休日の割増賃金にも存在します。
法定休日に出勤した場合は、通常賃金の35%以上の割増が必要です。
土日も診療するシフト制のクリニックでは、
スタッフが法定休日に出勤するケースが日常的に発生します。
このとき、「法定休日の割増分が固定残業代に含まれているか」が
明確になっていない場合、未払いリスクが発生します。
深夜割増・法定休日割増のいずれも、固定残業代の中に含める場合は
それぞれ何時間分・何割増分に相当するかを個別に明示する必要があります。
「うちは残業が少ないから関係ない」は通用しない
美容クリニックは一般病院と比べて残業が少なく、深夜勤務もほとんどないといわれています。
しかし、リスクは「頻繁に起きること」にあるのではなく、
「起きたときに対応できていないこと」にあります。
1度でも深夜22時をまたいだ勤務があれば、その分の割増賃金は発生します。
「そういうことが起きる可能性がある」のであれば、あらかじめ就業規則に規定しておくことが必要です。
規定がなければ、たった1回の深夜残業でも未払い残業代として請求の対象になり得ます。
固定残業代設計で確認すべき4つのポイント
現在の雇用契約書・就業規則を確認して、以下が明記されているかをチェックしてください。
- 固定残業代の金額が基本給と区別されて明示されているか
- 何時間分の残業に相当するかが記載されているか
- 深夜割増(22時以降)の扱いが明記されているか
- 法定休日割増の扱いが明記されているか
一つでも「曖昧」と感じる項目があれば、設計を見直す必要があります。
まとめ:「払っているつもり」が最も危ない
固定残業制は、正しく設計すれば合理的な制度です。
ただし、設計が不十分なまま運用することは、払っていないのと同じリスクを抱えることになります。
特に、
- 深夜割増の扱いが曖昧
- 法定休日割増が固定残業代に含まれているかどうかが不明
- 固定残業時間数が記載されていない
といった状態は、スタッフ数が増えるほど、また在籍年数が長くなるほど、
請求リスクが積み上がっていきます。
「問題が起きてから対応する」では、経営へのダメージが大きくなります。
今の設計が正しいかどうかを、一度整理しておくことが重要です。
ご相談・お問合せ
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当社では、クリニックの実態に合わせた労務コンプライアンスの整備を、
経営全体の観点からサポートしています。
「今の契約書・就業規則を見てほしい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。


