診療報酬改定のベースアップ評価料とは?対象職種や算定方法を解説

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診療報酬改定で注目されているベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを支える重要な制度です。
令和8年度改定では対象職種や点数体系も見直され、クリニック経営への影響がさらに大きくなっています。
本記事では、制度の仕組みから対象職種、届出時の注意点まで整理して解説します。

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目次

診療報酬改定のベースアップ評価料の仕組み

ベースアップ評価料は、医療従事者の処遇改善を目的として導入された診療報酬上の加算制度です。

令和8年度改定では対象範囲や点数設計が見直され、従来よりも活用しやすい制度へと変化しています。

ここでは制度の基本構造を整理します。

医療従事者の賃上げを目的とした新設項目

ベースアップ評価料は、看護師や医療技術職などの賃金改善を継続的に支援するために設けられた診療報酬項目です。

人材不足が深刻化する中、医療機関単独では十分な賃上げ原資を確保しにくい状況が背景にあります。

制度上は、評価料によって得た収入を職員の賃上げへ充当することが求められており、単なる収益増加目的では使用できません。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い

外来・在宅ベースアップ評価料には(Ⅰ)と(Ⅱ)があり、対象となる医療機関や算定方法に違いがあります。

(Ⅰ)は比較的届出負担が軽く、初めて制度を導入するクリニックでも取り組みやすい設計です。

一方の(Ⅱ)は、対象職員の給与総額や算定回数見込みなどを用いて区分を算出するため、(Ⅰ)より管理項目が多くなります。

令和8年度改定では、令和6年度・令和7年度の賃上げ実施状況等を踏まえた評価体系が設けられています。

入院ベースアップ評価料の構造と段階設定

入院ベースアップ評価料は、病院や有床診療所などを対象とした制度であり、入院医療については、入院基本料等の引き上げや減算規定とあわせて賃上げ対応が整理されています。

特徴は、入院ベースアップ評価料には区分ごとに段階的な点数が設定されている点です。

病棟運営では人件費比率が高くなりやすいため、賃上げ支援の効果も外来中心の医療機関より大きくなる傾向があります。

運用時には人件費構造全体の見直しも重要になります。

令和8年度改定で変更された点数の大幅な引き上げ

令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料の水準等が見直されています

背景には、物価上昇や他業界との賃金格差拡大があります。

特に事務職員や若手医師を含めた制度設計への変更は、多くの医療機関に影響を与えているのです。

単純な点数増加だけではなく、継続的な賃金改善実績をどのように示すかも重要な論点になっています。

診療報酬改定のベースアップ評価料における対象職種

ベースアップ評価料では、どの職種を賃金改善の対象に含められるかが重要になります。

令和8年度改定では対象範囲が拡大され、従来より幅広い職員に活用できる制度へ変更されています。

ここでは対象職種ごとの考え方を整理します。

看護師や薬剤師などのコメディカル職種

制度開始当初から、看護師や准看護師、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師などのコメディカル職種は主要な対象となっています。

これらの職種は採用難易度が高く、人材流出による診療体制への影響も大きいためです。

特に地域クリニックでは、近隣医療機関との給与差が採用結果へ直結しやすく、ベースアップ評価料を活用した待遇改善が経営課題となっています。

令和8年度から追加された事務職員や若手医師

令和8年度改定では、事務職員や40歳未満の医師・歯科医師なども対象職員に含まれます。

これまで事務部門は対象外となるケースが多く、現場では不公平感を生みやすい状況がありました。

受付やレセプト業務を担う職員の定着率は、患者対応や算定精度にも影響します。

職種横断的に賃上げを行える点は、今回の改定における大きな特徴といえるでしょう。

ベースアップ評価料の対象に含まれない役員や経営者

一方で、院長や理事などの経営者層、役員報酬については制度対象外となります。

ベースアップ評価料はあくまで雇用される医療従事者の処遇改善を目的としているためです。

実際の運用では、役員報酬との区分管理や給与台帳の整理も重要になります。

税務・労務管理と連動する部分が多いため、制度理解だけでなく内部管理体制の整備も求められます。

派遣職員を対象に含めるための要件と手続き

派遣職員については、一定の条件を満たすことで対象に含められる場合があります。

ただし、派遣元との契約内容や賃金改善分の反映方法を整理しなければなりません。

単純に派遣料金を増額するだけでは制度要件を満たさないケースもあります。

実務上は、派遣契約書の確認や賃上げ実績の記録管理など、通常雇用とは異なる対応が必要になります。

診療報酬改定のベースアップ評価料を算定するメリット

ベースアップ評価料は単なる加算制度ではなく、人材確保や経営改善にも影響する制度です。

特に近年は採用難や離職率上昇が深刻化しており、賃金改善を継続できるかがクリニック経営の安定性を左右しています。

人材確保や離職防止につながる賃金水準の向上

賃金改善を継続できる医療機関は、採用市場でも有利になりやすい傾向があります。

特に看護師や医療事務職は地域間競争が激しく、給与条件が応募数へ直結するケースも少なくありません。

ベースアップ評価料を活用することで、基本給や手当の引き上げを行いやすくなります。

結果として離職率低下や教育コスト削減につながる可能性があります。

令和8年度からの入院基本料における減算リスクの回避

令和8年度改定では、継続的な賃上げ実施状況に応じて、外来・在宅ベースアップ評価料の点数や入院料の減算に影響する仕組みが設けられています。

特に入院基本料を算定する医療機関では、人材配置維持が診療報酬へ直結するため注意が必要です。

賃金水準が競合施設より低下すると、人材流出によって施設基準維持が難しくなるケースも考えられます。

結果的に減算リスク回避にもつながる制度といえます。

クリニックの経営改善に向けた給与体系の整理

ベースアップ評価料への対応をきっかけに、給与体系や人事制度を見直すクリニックも増えています。

従来は属人的に運用されていた手当制度を整理し、基本給とのバランスを再設計するケースもあります。

届出書や中間報告・実績報告の作成過程で、人件費構造を可視化しやすくなるのです。

結果として、長期的な経営管理の精度向上につながることがあります。

政府が目標とする賃上げ率の達成と社会的な信頼性

医療分野でも賃上げ推進は重要政策となっており、社会的にも処遇改善への対応が求められています。

ベースアップ評価料を適切に運用している医療機関は、採用活動や地域連携の場面でも信頼を得やすくなります

特に求職者は「継続的に賃上げできる職場か」を重視する傾向が強まっているのです。

制度活用は経営姿勢を示す要素にもなっています。

診療報酬改定のベースアップ評価料の届出手順と注意点

ベースアップ評価料は届出後すぐに運用が終わる制度ではありません。

届出から中間報告・実績報告まで、継続的な管理が必要になります。ここでは届出時に押さえておきたい実務ポイントを解説します。

厚生局への届出に必要な書類と様式の選び方

令和8年度改定後の届出では、評価料に必要な対象職員や評価区分算出に関する情報を入力し、届出書添付書類を提出します。

賃金改善計画書の作成は不要です。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は比較的簡素な様式が用意されていますが、記載内容の整合性確認は欠かせません。

特に初診料や再診料の算定回数見込みは、実績データとの乖離が大きいと後の運用にも影響します。

事前準備が重要です。

実績報告の義務

令和8年度改定後は賃金改善計画書の提出は不要ですが、毎年8月に中間報告書、翌年度8月に実績報告書の提出が必要です。

また、給与台帳や賞与支給記録など、根拠資料の保管も必要です。

制度を継続運用するには、経理・労務・現場管理者が連携できる体制づくりが欠かせません。

令和8年5月中に行うべき継続算定の届出

制度改定に伴い、既に算定している医療機関も含め、全ての医療機関で令和8年5月中の届出が必要です。

令和8年度改定では施設基準の内容が変更されているため、令和8年度の新様式で改めて届出を行う必要があります

期限直前は厚生局対応も混雑しやすく、不備による差し戻しリスクも高まります。余裕を持った準備が重要です。

ベースアップ評価料の収入を全額賃上げに充てる運用ルール

制度上、ベースアップ評価料による収入は職員の賃上げへ充当する必要があります。

設備投資や広告費など、別用途へ流用することは認められていません。

また、定期昇給分とは区別して管理しなければなりません。

加えて、想定より算定額が上振れした場合も、報告書との整合性を確認しながら、制度上認められる範囲で賃金改善に充てる必要があります。

実績管理の精度が重要になる部分です。

診療報酬改定のベースアップ評価料でよくある質問

ベースアップ評価料は制度変更が続いているため、実務上の疑問も多く寄せられています。

ここではクリニックから相談の多い内容について整理します。

定期昇給分をベースアップ評価料に充てることは可能か?

原則として、定期昇給分はベースアップ評価料による賃金改善とは別管理になります。

制度上のベースアップとは、基本給や毎月支払う手当を追加的に引き上げる考え方です。

そのため、従来から予定されていた昇給分をそのまま充当する運用は認められにくい傾向があります。

給与設計時には区分管理が必要になります。

算定金額が実際の賃上げ額を上回った場合の対応は?

算定収入が当初見込みを上回った場合は、賞与や臨時手当として支給する方法があります。

翌年度へ一定額を繰り越す運用も検討されますが、実績報告との整合性が重要です。

単純に利益として残すことは制度趣旨に反するため注意が必要になります。

支給履歴や配分ルールを明確化しておくことが大切です。

新規開業したクリニックでも初月から算定できるか?

新規開業時の算定可否は、給与実績や届出時期によって異なるため、管轄厚生局の最新様式・疑義解釈で確認が必要です。

新規開業時は、届出様式に必要な賃金情報を整理したうえで、管轄厚生局に確認しておきましょう。

開業準備段階から制度活用を想定している場合は、人件費計画や届出スケジュールを早めに整理しておくことが重要です。

診療報酬改定のベースアップ評価料を正しく理解して活用しよう

ベースアップ評価料は、単なる加算制度ではなく、人材確保や経営安定化にも直結する制度です。

令和8年度改定では対象職種拡大や点数見直しが進み、今後さらに重要性が高まる可能性があります。

一方で、届出や実績報告には継続的な管理が必要であり、制度理解が不十分なまま進めると運用負担が増大する恐れもあります。

特にクリニックでは、院長自身が労務管理や経営判断を兼務しているケースも多く、制度対応が後回しになりがちです。

だからこそ、単純な加算取得だけでなく、「どのような賃金設計なら継続運用できるか」という視点が重要になります。

賃上げ原資の確保、人件費バランス、採用戦略まで含めて整理しながら、自院に合った運用方法を検討していくことが大切です。

ご相談・お問合せ

「ベースアップ評価料の届出方法が複雑でわからない」

「届出書や中間報告・実績報告をどう作ればよいか悩んでいる」

「対象職種や給与配分の考え方を整理したい」

こういったご相談を、クリニック経営の現場から多くいただいています。

当社では、ベースアップ評価料への対応だけでなく、クリニック全体の人件費設計や労務管理も踏まえた支援を行っています。

「まずは制度内容を整理したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

クリニックの開業支援から経営改善までをトータルサポートするKSメディカルサポートの専門コンサルタント・マーケター陣による共同編集チームです。
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