病院へのサイバー攻撃とは?主な手口や被害事例・対策を解説

病院へのサイバー攻撃は、単なるシステム障害では済みません。
電子カルテ停止による診療遅延や個人情報漏えいなど、患者の命と信頼に直結する経営リスクへ発展します。
近年は大規模病院だけでなく、中小規模の診療所・クリニックでも被害やリスクが指摘されており、早期の対策整備が欠かせません。
この記事では、病院が受けやすいサイバー攻撃の実態から、具体的な対策・緊急時の対応方法までを整理して解説します。
病院へのサイバー攻撃で想定される主な被害事例
病院へのサイバー攻撃は、単なるパソコンの不具合ではなく、診療停止や情報漏えいといった重大な経営問題へ発展します。
ここでは、実際に医療現場で起こり得る代表的な被害について整理します。
電子カルテが暗号化され閲覧できなくなるシステム停止
サイバー攻撃によって電子カルテが暗号化されると、診療に必要な患者情報へアクセスできなくなります。
既往歴や投薬履歴を確認できない状態では、安全な診療継続が難しくなるでしょう。
予約管理や会計システムまで停止すれば、病院全体の業務が混乱します。
特にランサムウェア感染では、復旧まで数日から数週間を要するケースもあり、地域医療への影響が長期化する可能性があります。
患者の病名やクレジットカード情報といった個人情報の流出
病院には氏名・住所・保険情報・病歴など、極めて機密性の高い個人情報が蓄積されています。
万が一流出した場合、患者への二次被害だけでなく、医療機関としての信頼低下にもつながります。
さらに、クレジットカード情報や決済情報が含まれている場合、不正利用被害へ発展する恐れもあります。
漏えい後は患者対応や謝罪、調査費用など多額のコストが発生しやすくなります。
データの復旧と引き換えに金銭を要求されるランサムウェア
近年特に増えているのが、ランサムウェアによる攻撃です。
これは院内データを暗号化したうえで、復旧の対価として金銭を要求する手口を指します。
医療機関は診療停止による影響が大きいため、攻撃者から「支払いに応じやすい」と見なされる傾向があるのです。
実際には身代金を支払っても復旧保証はなく、追加要求を受けるケースも存在するため、事前対策が重要になります。
病院がサイバー攻撃の標的にされやすい背景
医療機関は、扱う情報の重要性や診療継続の必要性から、サイバー攻撃の標的になりやすい特徴があります。
背景には、扱う情報の特殊性だけでなく、医療現場特有の運営事情も関係しています。

価値の高い機密性の高い個人情報が大量に揃っている
病院には、診療情報・保険情報・住所・電話番号など、悪用価値の高い個人情報が集約されています。
これらは一般的な個人データより高値で取引されるケースもあり、攻撃者に狙われやすい要因です。
特に医療情報は変更できない情報が多く、一度流出すると長期間にわたり被害が続く可能性があります。
そのため、病院は常に高い情報管理体制が求められます。
人命に関わるため身代金の要求に応じやすい
病院ではシステム停止が診療停止へ直結します。
救急受け入れや投薬管理に支障が出れば、患者の生命へ影響を及ぼしかねません。
このような事情から、攻撃者は「早期復旧を優先して支払いに応じる可能性が高い」と判断する傾向があります。
一般企業よりも緊急性が高いため、医療機関は特にランサムウェア攻撃の標的として狙われやすくなっています。
古い医療システムや機器の脆弱性が放置されている
医療機器や院内システムは、頻繁に停止できない事情から、古いOSやソフトウェアを継続利用しているケースがあります。
しかし、サポート終了済みのシステムには既知の脆弱性が残っている場合があり、攻撃対象となりやすくなります。
また、医療機器メーカー側の更新制限により、簡単にアップデートできないケースも少なくありません。
病院でのサイバー攻撃への効果的なセキュリティ対策
サイバー攻撃は完全に防ぐことが難しい一方で、被害拡大を防ぐ対策は数多く存在します。
重要なのは、単発の対策ではなく、院内全体で継続的に運用することです。

VPN機器のソフトウェアアップデートとパスワード変更
近年はVPN機器の脆弱性を悪用した侵入事例が増加しています。
古いファームウェアを放置すると、不正アクセスの入口になる可能性があります。
そのため、定期的なアップデートと強固なパスワード管理が必要です。
初期設定のまま運用されているケースもあるため、管理者権限の見直しや不要アカウント削除もあわせて実施すると効果的です。
生体認証やワンタイムパスワードによる多要素認証の導入
IDとパスワードだけの認証では、不正ログインを完全に防ぐことは困難です。
そこで有効なのが、多要素認証の導入です。
生体認証やスマートフォンを用いたワンタイムパスワードを組み合わせることで、認証突破のリスクを大幅に低減できます。
特に外部接続やクラウド型電子カルテを利用している場合には、優先的に整備したい対策です。
全スタッフへのフィッシングメール訓練とセキュリティ教育
サイバー攻撃の入口として多いのが、メール経由の感染です。
医師や看護師、事務スタッフなど全職種が対象となるため、一部担当者だけの教育では不十分です。
定期的な訓練メール配信や、怪しい添付ファイルを開かない運用ルールを整備することで、人的リスクを抑えやすくなります。
忙しい現場ほど、実践的な教育が重要になります。
サプライチェーンを構成する外部委託業者の安全確認
院内だけ対策していても、委託先経由で侵入されるケースがあります。
電子カルテ保守会社や医療機器ベンダー、予約システム事業者など、外部接続を伴う委託先の確認は欠かせません。
契約時にはセキュリティ体制や障害発生時の責任範囲を明確にしておく必要があります。
定期的な確認体制を持つことで、想定外の侵入口を減らしやすくなります。
病院・クリニックで確認したいサイバーセキュリティ対策チェックリスト
病院やクリニックのサイバーセキュリティ対策では、電子カルテ・VPN機器・認証管理・スタッフ教育・外部委託先管理をまとめて確認することが重要です。 以下のチェックリストを使い、自院のリスクを定期的に見直しましょう。
| 確認項目 | チェック内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| 電子カルテ・院内システム | バックアップを定期取得し、復旧テストまで実施している | 高 |
| VPN機器 | ソフトウェアを最新化し、初期パスワードを変更している | 高 |
| 認証管理 | 多要素認証を導入し、退職者や不要アカウントを削除している | 高 |
| メール対策 | 不審メール訓練を行い、添付ファイルやURLの確認ルールを整備している | 中 |
| スタッフ教育 | 医師・看護師・受付スタッフを含め、全職種にセキュリティ教育を実施している | 中 |
| 外部委託先管理 | 電子カルテ保守会社や医療機器ベンダーの接続権限・緊急連絡先を把握している | 高 |
| インシデント対応 | サイバー攻撃を受けた際の院内連絡先、保守会社、関係機関への報告手順を整理している | 高 |
特に「バックアップ」「VPN機器の更新」「多要素認証」「外部委託先の確認」は、病院・クリニックのサイバー攻撃対策で優先的に見直したい項目です。
病院がサイバー攻撃を受けた(疑い含む)時の対処法
サイバー攻撃は、発生後の初動対応によって被害規模が大きく変わります。
慌てて対応すると証拠消失や感染拡大につながるため、あらかじめ基本的な流れを整理しておくことが大切です。

厚生労働省の医療情報担当参事官室への速やかな連絡
医療機関で重大なサイバーインシデントが発生した場合、関係機関への迅速な連絡が求められます。
特に診療停止や大規模障害が発生した際には、厚生労働省への報告体制を確認しておく必要があります。
初動が遅れると、被害状況の把握や支援連携にも支障が出やすくなります。
院内で報告フローを明文化しておくことが重要です。
個人情報保護委員会へのデータ漏えいに関する報告
患者情報が漏えいした可能性がある場合には、個人情報保護法に基づく対応が必要になります。
漏えい人数や内容によっては、個人情報保護委員会への報告義務が発生します。
また、患者本人への通知や説明対応も求められるため、法務・広報・システム担当が連携できる体制整備が欠かせません。
平時から連絡先一覧を整理しておくと対応しやすくなります。
バックアップデータを用いたシステムのクリーンインストール
感染したシステムをそのまま復旧すると、再感染する危険性があります。
そのため、バックアップデータを利用したクリーンインストールが基本対応になります。
ただし、バックアップ自体が感染しているケースもあるため、定期的な復旧テストが必要です。
復旧優先順位を整理し、診療継続に必要なシステムから段階的に復旧する運用が重要になります。
病院へのサイバー攻撃に関するよくある質問
病院のサイバーセキュリティ対策では、「何から始めればよいかわからない」という相談が少なくありません。
ここでは、医療機関からよくある質問を整理します。

医療機関が狙われる最新のトレンドはありますか?
近年はVPN機器やリモート接続環境を狙う攻撃が増えています。
また、メール添付ファイルによるマルウェア感染だけでなく、取引先を装った巧妙なフィッシングも増加傾向です。
さらに、電子カルテベンダーや委託業者を経由した侵入も問題視されています。
単一対策では防ぎ切れないため、多層的な防御体制が重要になります。
サイバーセキュリティ対策への補助金制度はありますか?
自治体や関連機関によっては、IT導入やセキュリティ強化に関する補助制度が用意されている場合があります。
ただし、公募時期や対象条件は毎年変動するため、最新情報の確認が必要です。
導入機器だけでなく、教育研修やクラウド移行が対象になるケースもあります。
申請には事前準備が必要になるため、早めの情報収集が望ましいでしょう。
小規模なクリニックでも標的になる可能性はありますか?
小規模クリニックでも十分に標的となります。
実際には「対策が弱そうな施設」を狙う攻撃も多く、規模だけでは判断されません。
特に、古いルーターや共有パスワード運用が残っている施設は注意が必要です。
スタッフ数が少ない場合でも、最低限のバックアップ運用と認証強化は早期に整備することが推奨されます。
病院へのサイバー攻撃の対策を徹底して患者の命と情報を守ろう!
病院へのサイバー攻撃は、単なるITトラブルではなく、診療継続・患者安全・経営信頼に直結する重大リスクです。
特に電子カルテ停止や個人情報漏えいは、現場運営へ深刻な影響を及ぼします。
また、医療機関は人命を扱う特性上、攻撃者から標的にされやすい環境にあります。
そのため、「まだ被害を受けていないから大丈夫」という考え方は危険です。
重要なのは、システム更新・多要素認証・スタッフ教育・バックアップ運用を継続的に実施することです。
加えて、攻撃発生時の連絡体制や初動対応を整理しておくことで、被害拡大を抑えやすくなります。
患者の安心と地域医療の信頼を守るためにも、今のうちからサイバーセキュリティ対策を見直していきましょう。
ご相談・お問合せ
「電子カルテのセキュリティ対策が十分か不安」
「VPNやリモート接続の設定を見直したい」
「サイバー攻撃時の院内対応フローを整備したい」
こういったご相談を、クリニック経営の現場から多くいただいています。
当社では、医療現場の運営実態に合わせたサイバーセキュリティ対策を、システム面だけでなく経営リスク管理の観点から支援しています。
「まずは現状のリスクを確認したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。




