個人クリニックから医療法人へ~ターニングポイントと、それぞれのメリットとデメリット

「個人クリニックとして開業したが、ゆくゆくは医療法人化したい」「個人クリニックを長く運営してきたが、自分の医療の理想のために医療法人化したくなってきた」という人もいることでしょう。

そんな人のために、ここでは「個人クリニックから医療法人に切り替えるときのタイミング」と、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。

目次

個人クリニックと医療法人、それぞれのメリットとデメリット

「個人クリニック(入院患者のベッド数が20以上であれば『個人病院』となる。ただしこの記事では、『個人クリニック』の表記に統一する)から医療法人化するタイミング」を見る前に、まずはそれぞれのメリットとデメリットについて解説していきます。

個人クリニックは、医療法人よりもフットワークが軽く、設立~運営において課せられる義務が少ないというメリットがあります。たとえば個人クリニックの場合は開設届を出すだけで開設できますし登記も不要ですが、医療法人の場合は都道府県知事の認可を受けなければなりませんし登記も必要です。さらに、社会保険への加入も、個人クリニックならばスタッフが4人以下であれば加入義務はないのに対し、医療法人では加入義務があります。立ち入り検査も原則として行われない個人クリニックに比べて、医療法人の場合は5年に1度程度の立ち入り検査があります。

また、収入が低ければ低いほど、個人クリニックの場合は所得税の税率も低くなります。

一方、個人クリニックの場合は開設できる施設数が1つのみと決められています。
また、「所得が低ければ所得税の税率が低くなる」としましたが、収入が上がれば上がるほど、税率は高くなります。

対して医療法人の場合は、個人クリニックとは異なり、「複数の施設を運用できる」というメリットがあります。分院をいくつも建てることができるため、より多くの収入を得たいという人や自分の医療の理念を広めたいという人にとっては医療法人化は必須だといえます。また、運営できる施設も、個人クリニックの場合は診療所・病院と非常に限られた範疇であるのに対して、医療法人の場合は介護施設や社会復帰施設、さらには医療系の学校や研究所なども運営することができます。

また、個人クリニックの場合は低収入の場合は所得税は5パーセントに抑えられるものの、所得が増えていけば最大で45パーセントもの所得税が課せられます。一方で医療法人の場合は、資本金の額と所得金額によって税率が決められますが、最大でも23.2パーセントにとどまります。そのため、年収が多ければ多いほど、医療法人化するメリットが大きいのです。

ただし医療法人の場合は、所得金額が低くても、税率は15パーセント以下にはなりません。また届け出が複雑化し、定期立ち入り検査が行われたり、複数名の社員を雇わなければならなかったり、社会保険の加入が義務付けられたりします。

医療法人化のタイミング

タイミング

上記を踏まえたうえで、「では個人クリニックはいつのタイミングで医療法人化すればよいか」を考えていきましょう。

課税所得が1800万円を超えた

個人クリニックが医療法人化するタイミングのもっとも分かりやすい指標として、「課税所得が1800万円を超えたとき」といいものがあります。

個人クリニックと医療法人のそれぞれの所得による税率の違いは上で述べましたが、18000万円を超えた個人クリニックの場合、納める金額の税率が40パーセントになります。しかし医療法人の場合は23.2パーセントに抑えられるので、非常にメリットが大きいといえます。

個人クリニック開業から7年が経った

クリニック・病院には数多くの医療機器が導入されます。これらの医療機器には減価償却期間が定められていますが、その期間は6年までと決められています。それを超えると、医療機器も「利益」とされるようになり、個人クリニックの「利益」が上がり、その分税金も高くなってしまいます。

保険診療の金額が5000万円を超えた

医療機関には、「概算経費」という特別な計算式が適用されています。これは、「経費を計算するときには、実際に使った経費の金額だけではなくて、社会保険診療報酬にかかる費用を経費も算入してよいですよ」という制度です。経費計上できる金額が増えるため、節税が可能になるのです。

ただし概算経費の適用は、「社会保険診療費が5000万円以下で、かつ社会保険診療費+自由診療報酬の金額が7000万円以下である場合のみ適用する」と決められています。これをオーバーするのであれば、医療法人化を考えた方がよいでしょう。

「個人クリニックのままか、それとも医療法人化か?」は、先生ご自身の人生にも関わる重大な選択肢です。私たちKSメディカルサポート株式会社では、先生ご自身の思いをよくお聞きしながら、最良の選択肢を提案していきます。

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