経済産業省が積極的に推奨している取り組みとして、「健康経営」があります。
ここでは「健康経営とは何か」「健康経営の実践がクリニック経営にもたらすメリット」について解説していきます。
従業員の健康を考えて経営していく取り組み「健康経営」
「健康経営」とは、ただ企業の利益だけを追求するのではなく、従業員の健康管理などに目を向けて、それを経営に生かすかたちで実践していくことをいいます。
この健康経営の考えは比較的近代にできたもので、1990年代にアメリカで生まれました。当時のアメリカの企業では、従業員にかかる医療費が非常に大きくなっていて、これが企業の利益を損なうまでになっていました。そのため、「医療費がかからないように、従業員の健康を管理することが重要なのではないか」という考え方が生まれたのです。
この考え方はやがて日本にも入ってきて、2013年の日本再興戦略(第二次アベノミクスで興ったものであり、日本経済を良くするために練られた戦略)で大きく取り上げられました。
国が推奨している取り組みであることから、国では健康経営をしている法人に対して認定を与え、「健康経営優良法人認定制度」によって見える化するという仕組みをとっています。
健康経営の具体的な実践方法は各企業によって異なりますが、たとえば、
- 昼休みや始業前に運動を行う
- 車通勤ではなく、徒歩や自転車での通勤を推奨する
- 誕生月に健康診断を行う
- 誕生月に健康診断を行う
- 有給取得の推奨
- 社員食堂のメニューの見直し
などが挙げられます。
また、医療機関で健康経営を行っているところでは、
- 自院(およびそのグループ)を受診する場合は、医療費を補助する
- 勤務時間内に受診できる
- 運動クラブやフィットネスジムを開講し、参加を呼び掛けている
- ノー残業デーの実施および残業で22時以降に勤務が終わった場合は翌日が休日になる
- 健康診断項目を充実させ、かつ無料で受けられるようにする
などの取り組みが行われています。
クリニックと健康経営
人の健康や生命に深く関わることになるクリニックにとっても、当然この健康経営は非常に大きな意味を持ちます。
第一に、健康経営を続けることでスタッフの定着率が上がり、離職率が下がることが期待できます。病気による離職が少なくなることはもちろん、「スタッフである私たちのために、さまざまな取り組みをしてくれているクリニックだ」という満足感は、スタッフの仕事へのモチベーションの増加と帰属意識の向上に役立つことでしょう。
また、スタッフが充実して、やりがいを持って働くことによって、患者様からの好感度も上がることが期待できます。
健康経営は企業イメージの上昇にもつながります。一般企業の場合はこれが「投資家による投資」とも結びつくのですが、クリニックにおいても「イメージの上昇」は非常にメリットが大きいといえます。患者様は、自分の体や心を任せることになる医療機関に対して、「クリーンさ」「健全さ」「(従業員も含む)健康への配慮と関心」を求めます。健康経営に取り組み、またそれをホームページなどで告知しているクリニックであることは、初診の患者様を増やすことに繋がります。
従業員が病欠などで休職している状況であっても、従業員を雇っているクリニックには社会保険料の支払いが求められます(社会保険料は従業員とクリニックで折半)。
「従業員の病欠を減らすこと」は、「働けない状態にある従業員の社会保険料を負担する」という状況を避けることにもつながるのです。
健康経営は、従業員に対して負担になる場合もあります。運動が嫌いな従業員や通勤時間を減らしたい従業員には、「なぜ勤め先の主導で運動をしなければならないのか」「車ではなくて自転車を使うとなると、通勤時間が延びる……」と逆にマイナスに受け取られてしまうかもしれません。しかしそれでも、健康経営を実践することのマイナスとプラスをはかりにかけた場合、プラスの方が大きいといえます。
弊社では、健康経営の実践のためのお手伝いをしていますので、お気軽にご相談ください。