医療法人と一般社団法人の違い、一般医療法人についての基礎知識

今回は「一般医療法人」に注目し、医療法人の基礎知識を紹介するとともに、一般社団法人との違いについて解説していきます。
一般社団法人は医師でなくても理事長になれる、医療法人は制限がある
医療法人とは、“病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人”と定義づけられています。
対して、一般社団法人とは社員が集まって立ち上げる法人のことをいいます。
一般社団法人と医療法人のもっとも大きな違いは、「理事長になる人間に、医師免許もしくは歯科医師免許が求められるかどうか」という点です。
一般社団法人の場合は理事長に医師免許・歯科医師免許を持っていない人間が就いていてもクリニックを開業することができますが、医療法人の理事長になるためには医師免許・歯科医師免許が必須です。
また、一般社団法人の新規設立の申請は一年を通していつでも行えるのに対して、医療法人の場合は半年に1回決められたタイミングで行わなければなりません。また、個人クリニックを運営している人が医療法人化したいと考えたとしても、開業後2年以上経過してからでなければ医療法人化することができないというデメリットもあります。さらに一般社団法人の場合は拠出金が必要でないのに対して、医療法人の場合は拠出金が必要となります。
このようなことを考えれば、設立の手続きにおいては、一般社団法人よりも医療法人の方が制限が多いといえるでしょう。
医療法人ならではのメリットもある

ただ、医療法人には一般社団法人にはないメリットがあります。
そのなかでももっとも大きいのが、「資金調達をしやすい」という点です。
医療法人を設立するためにはクリニックを開業してから2年以上経過していなければなりません。これはデメリットにもなりえますが、同時に銀行などから見たときには「2年(以上)にわたってきちんと運営できていた」と判断されるため、信用度が高く、融資をしやすいのです。
対して一般社団法人は、すぐに設立できるためブランド力がやや弱く、信用の面で医療法人に一歩劣ると考えられてしまいがちです。
医療法人の方が開業資金を得られやすいうえ、開業後の融資も受け続けやすいのです。そのため、大規模な病院を運営したい場合は、一般社団法人よりも医療法人の方が有利に事が進められます。
また、医療法人の場合は事業として継承しやすいというメリットもあります。一般社団法人の場合は後継者がいない場合は解散となりますが、医療法人の場合は後継者がいなかった場合でも法人として存続することが可能です。
上では「一般社団法人よりも医療法人の方が、設立にかかる制限が多い」としました。しかし医療機関を開設するときのスムーズさに関しては、医療法人の方に軍配があがります。これは、一般社団法人が医療機関を開設できるようになってからの歴史が非常に浅いからです。
一般社団法人が医療機関を開設できるようになったのは、2008年のことです。また本格的にその取り組みが始まったのは2013年からです。そのため、一般社団法人による医療機関の開業は、その歴史が始まってからわずか15年程度しか経っていません。
対して医療法人の方には長い歴史があり、1950年からは民間医療機関が医療法人化できるようになり、さらに1985年にはより法人設立の条件が緩められました。
一般社団法人と医療法人では「医療機関を開業できるようになってからの期間」が60年近くも違うため、今でも一般社団法人の方が手続きにかかる時間が長くなったり、断られたりする可能性が高いといえます。
一般社団法人と医療法人はその性質に違いがあり、医療機関の開業までの道筋にも違いがあります。
私たちは、一般社団法人の医療機関開業にも、医療法人の医療機関開業にも、どちらにも高い知識と確かなサポート能力を持っているプロ集団です。お困りのことがあれば、ぜひご相談ください