かつて日本は先進国の中でも高度な医療を安い費用で提供していると言われてきました。 しかしながら、OECD加盟国の3分の1が、入院や一般開業医の医療に対する患者の一部負担をしないなど、厳しい経済状況の中でも窓口負担を強いる努力を行っていた反面、日本では1973年の老人医療費支給制度の導入により、高齢者は10年ほど医療費無料の時代があるなど、窓口負担を軽減する政策が取られていました。
その期間の医療機関への受診率が1.8倍まで増加し、病院をサロンのように利用するという不必要な受診も増えてしまう残念な結果となったのは周知の事実です。
では窓口負担ではなく、日本のGDPに占める保健医療支出の比率で見てみると、どのようなデータになっているのでしょうか。
OECD(経済協力開発機構)加盟国と日本の医療費を比較したところ、対GDPにおける保健医療支出比率の割合が高くなっています。
日本は「高福祉」と言われる社会保証負担の高いヨーロッパの国々と同じ水準にあるのです。つまり、安い費用で医療を受けられるという日本のイメージは、やはりここでも崩れかかっています。
▼参考URL
https://www.jmari.med.or.jp/download/RE077.pdf
実は日本の医療費は急激に上昇しているわけではありません。主な原因はOECDが保健医療支出の算出基準を変更したことによるものとされています。
OECDが11年にガイドラインであるSHA(A System of Health Accounts)を改訂したことで、介護などの長期医療(保健)サービスに、従来の医療の有資格者が提供するサービスに加えて、ADL(日常生活動作)に関するサービスも含まれることになりました。
これにより、介護サービスでの食事や入浴といった日常生活動作が保健医療支出として計上されることとなり、保健医療支出を大幅に上昇させることとなったのです。つまり、高齢化が最もすすんでいた日本は、以前から医療費が高い水準にあり、この改訂によってその事実が明るみになったと言っても過言ではありません。
今までは、保健医療支出の対GDP比は、日本の医療が高度でありながら安く提供されているという裏付けとして使われてきました。それにより、診療報酬をはじめとする医療関係予算の増額にも強い説得力をもたせることができました。
しかし現在、このデータは逆に日本の医療費は高いという結果の裏付けとなってしまいました。現在の政策は社会保障の負担をいかに軽減するかが焦点となっており、医療費はさらなる削減の圧力にさらされる可能性が高いといえます。
やはり、通常医療のみでの経営や方針に頼らず、世の中のながれや政策の影響を受けにくい自費診療という柱を設け、2つの柱で医療経営を行なっていくことが、ゆるぎない経営基盤となることは確実と予測されるのです。大きな変化に備えて、自費診療に強い弊社にご相談ください。